回天

出口のない海」読了。絶対に泣けるから読んでくれと言われたものの、肩透かし。「クライマーズハイ」を読んで以来の感動を再びと思ったけど、ちょっと薄っぺらい感じがした。
小学生のときにお爺さんと一緒にお風呂に入ると、いつも背中にある二つの銃創を見せられ戦争の話しを聞かされた。市役所に勤めていたお爺さんは南方に出陣し、そこで撃たれて傷を負ったらしい。一度だけお爺さんと二人で戦地であるパラオ諸島に行き、ここで戦ったんだと澄んだ青い海とサンゴ礁と無数の無人島に囲まれた美しい島を見せてもらったことがあるが、単純に海外旅行に連れて行ってもらえたことが嬉しく、当時は戦争がどんなことであるかまったく考えていなかった。もしまだ生きていたら色々と聞きたかったことはあるが、自分が体感した時間が歴史として客観視できないように、お爺さんが生き抜いてきた戦争と戦争を知らない自分との戦争観も大きく隔たりがある、少しずつすり合わせをして一部の指導者たちの行動や軍部の記録を列挙した教科書的な事実だけではなくて、普通の国民がどう折り合いをつけていたのか戦時下の日本を覆っていた膜みたいなものを想像するしかないんだと思う。終戦記念日前にこうした本を読むきっかけくれたゼミ仲間に感謝したい。


もうすぐ盆だし田舎に帰って、お婆ちゃんの満州での苦労話を聞くとするか。

出口のない海

出口のない海